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無一文

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無一文になった事があるだろうか、と考えたら、あった。
財布を落としたとか、無職だったとか、そういう事でなく。
一瞬の短い期間ではあるけれど。

専門学校へ通っていた時、働きながら通うスタイルの学校だった為、少しながらお給料もあったし、学校と職場に近い母の家に住まわせてもらっていたので、最初の頃はなんの問題もなく暮らしていた。

がしかし、母が突然帰ってこなくなり、1ヶ月ほどして男を連れて帰ってきた。
男の家に住むので、あとはどうにかやってくれ、的な事をだらだらと遠回しに伝えられ、母は出て行った。

そうなると、アパートを引き払って実家へ帰るか、と思ったがそうもいかない。
学校もあるし仕事もあるし、なんせ実習も始まる事もあり、実家へは帰れない。
なんだかんだ悩んだ結果、おばあちゃんがアパートの家賃を出してくれる事になり、私はそのままアパートに残った。何にも考えていなかった。生活費の事。

実習が始まると仕事の時間が減る為、お給料も減ってしまう。
さらにその少ないお給料の中から授業料も引かれるので、手元にお金なんて少ししか残らない。

そこから光熱費と携帯代と、って払うと、お金ないんですけどーーー!!!!と叫びたくなるような金額しか残らない。
何がいるって食費!食べるもの!ない!

いやちょっと見栄を張った。光熱費なんてほんと考えてなくて、よく電気も止まっていたし、ガスも止められた事もある。
水道はなんとか…死んじゃうから。

小銭とかぐらいは残るんじゃないの?って思ったんだけど、そのうち小銭をポケットに貯めて、一円とかそういう小銭を、綺麗に使い切るって技を覚えてから、無一文って状況を何回か作り上げたわけ。

無一文になるとなんにも出来ないから、なんにもしない。余白の時間は常に真っ暗い部屋で横になっていた。

朝起きて、もらい物のホイップクリーム(喫茶店でバイトをしていた当時の彼からの差し入れ)を吸って、水道水を飲んで出勤。
職場の食堂のおばちゃん達から、残ったパンとか残ったご飯とかをもらって食べて学校。
学校終わったら、職場に戻って、帰る前に休憩室のインスタントコーヒーに、恐ろしい量のクリープと砂糖を入れてカロリーを摂り、帰って寝る。
ね、野菜やお肉などが無い。

仕事が実習になったり、夜勤したり、当時の彼がご飯を食べさせてくれたり、いろいろと変化はあったけど、だいたいはこんな感じで無一文期間を過ごしていた。

あっという間にガタガタに体調を崩し、見事に見た目だけで不健康を体現出来た。そのおかげで周りの人達が助けてくれて、なんとか卒業する事が出来た。

真冬の水シャワー、謎の湿疹に蕁麻疹、突然の骨折、電気のつかない部屋、大量のホイップクリーム、あられ工場のひねり揚げ、今はどれも懐かしい思い出になってしまった。

当時は仕事に実習に学校に、と、忙しい期間だったし、他の同級生達も忙しくしていたから、辛いとかしんどいとかも思わなかった。むしろ毎日必死で楽しかったように思う。脳内麻薬的なもので、少しラリっていたのかもしれない。


就職して、初めてちゃんとしたお給料を貰った時は倒れるほど嬉しかったが、無一文時代に培われたお金を使い切る能力のおかげで、それからもしばらく貧乏だった。
by kakikata3648 | 2019-03-04 15:06

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